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Paradoid B-72
Paraloid B-72はRohm & Haas 社によって開発されたアクリル系樹脂の一種。 無色透明、水には不溶で、エタノールを含む有機溶剤に溶ける。 耐久性が高く博物館で保護剤や補修剤として良く使用されているらしい。 以前Acryloid B-72とも呼ばれたが現在その呼び方は使われていない。
ラベルをスライドガラスに貼る接着剤として推奨している文献もあったが、 扱いが面倒だし、信頼性に疑問を感じるので私は使うのをやめようかと思ってる。 いちおう調べたことを残しておく。
参考
引用で書ける?
性質
- 無色透明
- 水には不溶
- 耐久性が高い
- ラベルの印字に使うインクは有機溶剤耐性が必要。ウチのブラザーのレーザープリンタはダメだった。色素自体は顔料なのだがそれを熱で溶ける樹脂でコーティングしてあるっぽい。顔料インクのインクジェットプリンターの場合、インクジェット用紙の場合は大丈夫だった。光沢紙はダメ。
- 溶液を作るのに特別な方法が必要(後述)
- 固体の状態では長期保存が可能
- 溶液の状態でも長く保存できる。→ただし固まると溶かすのが難しいかもしれない(未調査)
- 入手が難しく高価
きわめて安定性が高く100年以上は持つらしい。 そのため博物館において、遺物や美術品の補修、表面のコーティング等に使われている。
The polymer dissolved in organic solvents such as ethanol, acetone, toluene, and xylene fulfills the highest standards in long-time stability with an expected life-time of over 100 years and removability by organic solvents (Horie 2011, p. 159; Davidson & Brown 2012). (BIRGER NEUHAUS, THOMAS SCHMID, Jens Riedel, 2017, p.122)
ラベル用の糊としての使用実績
Paraloid™ B-72 was suggested by Gütebier (2011, p. 74) for attaching labels to glass slides. (BIRGER NEUHAUS, THOMAS SCHMID, Jens Riedel, 2017, p.122)
入手方法
日本で売ってるところは1っヶ所だけ(調査した範囲では)。 以前パレットというショップでも売っていたが現在扱っていないようだ。 メルカリで小売りされていた形跡もあったが今は売り切れてた。 海外には少量販売しているところがあるが、日本に送ってくれるかまだ調べてない。送ってくれる場合でも送料がむちゃくちゃ高くなることがあるので要注意。
ショップ | 容量と価格(2024年8月調べ、送料別) |
---|---|
三恒商事 | 1kg。まだ問い合わせてない。 |
Etsy | 以前(2022年9月)ここから購入した。50gで送料込み¥2,000ぐらいしたが、今は倍くらいになってる |
ZOIC PalaeoTech(イギリス) | ¥1000(1,800)/50g, ¥1500(1,800)/100g, ¥2,400(4,600)/250g, ¥4800(4,600)/500g, ¥7,700(4,600)/1kg |
Deffner & Johann (ドイツ) | €4.90/100g, €29/1kg 詳細未調査 |
Kremer Pigmente (ドイツ) | $12/100 g, $45/500g 詳細未調査 |
MuseuM Services Corporation (アメリカ) | $15/250g, $24/500g, $38/1kg。詳細未調査 |
調整方法
アセトンに溶かしてバルサム瓶で保管する。 以下のようにするとかき混ぜることなく溶かすことができる。 単に混ぜるとなかなか溶けないらしいのだが、実際どうなるのかは試してない。
ジャム瓶などのフタにバッグをつり下げ、そのバッグの中にペレットを入れる。 アセトンはバッグの下の方が少しつかるくらい入れる。 リンク
私は手持ちの材料で、以下のようにしたがもう少し大きい方が良さそう。
- セリア WECKキャニスター30mL
- アルミパンチングボード
- M3ネジ(16mm)とナット
アルミパンチングボードを丸く切って、M3ボルトを取り付けた。 パンチングボードは3.2mmぐらいの穴が開いていて、細かい網を上に載せた方が良いかと思ったが不要だった。 ペレットを一度に入れるとフタが閉まらなかったので2回に分けて入れた。
以下濃度はアセトン10mlを10gとした重量パーセント。 → w/vにすべき。
濃度は、まだ調査中だが、40%は濃すぎな感じ。 33%あたりか。
アセトンだと揮発速度が早すぎて使いにくいので、エタノールを少し混ぜた方が良いかもしれない。 → 調査中
溶けたらバルサム瓶に移して保存する。 → バルサム瓶は揮発しやすい。 アセトンをポリエチレン容器に長期間保存することは、避けた方が良さそう。
溶解するまでに掛かる時間
要した時間はアセトン15mlとParaloid B72ペレット10g(40%?)、室温30℃で2時間強。 溶剤としてエタノールを使用した場合は倍以上時間が掛かる(25%でしか試してない)。
剝がし方
水に浸けておき、端から引っ張るようにすれば簡単に剥がれる。
時間!!
注意事項
- ラベルのインクはアセトン耐性があること
- アセトンは引火しやすいので扱いには注意すること
- 長期間放置して固まると溶けない可能性があるので、ときどきチェックして薄めること。
参考文献
Neuhaus, B. et al. (2017) Collection management and study of microscope slides …
Backlinks
TODO
調査中止。
- 最適な濃度(30〜40%?)。
- アセトンだと揮発が早すぎて作業しづらい。エタノールで薄めると良いらしいが、その濃度。